なぜ物語文の「気持ち」が読み取れないのか?

物語文は説明文と同様に、国語の読解問題では欠かせないジャンルの1つです。物語文はストーリーを通して登場人物たちの心の動きに注目することが大切で、心情に関する問題が多いのが特徴ですが、そのことはこちらの記事でも紹介しました。

試験で点をとるための物語文の読み方
たとえば子供たちに「説明文と物語文のどちらが好き?」と尋ねると、半数以上の子供が物語文と答えます。これはどの学年もほぼ同じで物語文が好きな子...

いずれにせよ物語文で点をとるには、心情に注目することが必要です。ただ、それは子供たちもわかってはいるのです。それでも心情表現の理解が苦手な生徒は少なくありません。

なぜ大事だとわかっていても読み取れないのでしょうか。心情の読み取りが苦手な子供は、そもそも何が原因なのでしょうか。そして苦手な状態を克服することはできるのでしょうか。今日は物語文の心情の読み取りというテーマでお話ししたいと思います。

心情の読み取りが苦手な4つの理由

これはとくに小学生を見ていて思うのですが、“大人度” の高い子供、つまり同じ学年の子供にくらべて情緒的に発達している子供の方が、物語文の心情の読み取りは得意なようです。

また男女をくらべてみると、小学生の年代では一般的に女の子の方が心情理解に長けているように思います。やはりこの点は成長の早さも関係があるのではないでしょうか。厳密に調べたわけではありませんが、わたしの過去の生徒たちを思い浮かべても、これはある程度当てはまっていて、情緒的な成熟度の差が心情の理解の差に表れているのを感じます。

子供は日常生活を通して、さまざまな心情を抱いています。それは間違いありません。でも、いざ自分で物語文を読んでみると、なぜか心情(気持ち)が上手く読みとれない。そんなことも少なくありません。物語文の心情の読みとりが苦手な子供は、いったい何が原因なのでしょうか。わたしは4つの理由があると考えています。

心情を表す語彙の不足

喜怒哀楽という言葉に代表されるように人間の感情はさまざまですが、子供は大人にくらべて、まだ語彙が豊富ではないので、物語文の中で何らかの感情が表現されているのは理解できても、その感情をどう言い表せばよいのか、適当な言葉が見つからないのです。つまりこのケースでは、心情の読みとりは語彙の問題とも言えます。

また喜怒哀楽など、読めばすぐにわかる場合は問題がなくても、複数の感情が混じり合っている場合は、難易度は上がります。たとえば、過去にわたしが授業で実際に扱った物語文を例にとると、「期待と不安」や「驚きと喜び」などは生徒も比較的理解しやすいようでしたが、「後悔と無力感」がテーマの時は、「後悔」はともかく「無力感」という心情がまだ子供には理解しづらいようで、少し解説を加えたことがありました。

登場人物の性格を意識せずに自分の視点で読んでいる

子供たちは登場人物の性格についてはあまり深く考えずに読んでいるようです。でも、これは意外と大事なことなんです。というのは、ふだんの生活で同じ出来事を経験しても、その受け止め方には個人差があるように、物語文のストーリーの中で起こった出来事も、登場人物(とくに主人公)の性格によって、反応は異なるからです。

この点を無視すると、物語文を読んでも自分を基準にして考えてしまい、登場人物の気持ちから離れてしまいがちです。入試で物語文を読むということは、趣味で読む場合とはちがい、できるだけ自分勝手な解釈は控えて、登場人物の気持ちを素直に読みとることが求められます。ですから、そのためにも登場人物の性格を意識することが大切なのです。

物語文を読みながら、主人公の性格を意識するだけでも、ストーリーの理解は深まっていくはずです。主人公の性格をイメージするのが難しければ、好きな漫画やアニメのキャラクターをヒントにしてもいいですし、学校や近所の友達を思い浮かべてもいいと思います。自分にとって身近な人物がヒントになる場合もあるからです。

間接的な表現を別々に認識している

物語文の心情理解が難しい3つ目の理由は、心情が地の文に直接書かれていない場合も多いからです。心情(気持ち)は間接的に表現されていることも多く、たとえば、登場人物のちょっとした態度やしぐさ、表情、セリフ、声の調子(口調)、情景などがその例です。心情はそれらの情報を総合的に判断する必要があります。

ところが物語文が苦手な子供は、それらをただ別々に眺めているだけです。別々の表現を結びつけて総合的に判断する習慣がありません。だから心情が読み取れないのです。

登場人物が多い場合

物語文の登場人物の数も、心情の読みとりに影響します。登場人物の数が少ない場合はともかく、数が増えると誰の心情にフォーカスすればいいのかわからなくなり、文章を読みながら途中で混乱してくるからです。本来なら登場人物の数が増えたとしても、主人公の気持ちにフォーカスして読めばいいのですが、物語文を読み慣れてない子供はそれを忘れがちです。

 どうすれば心情の理解度がアップするのか?

物語文の心情の読みとりに欠かせないもの、それは「想像力」です。想像力は、ストーリーの内容とまったく関係のないことを頭に思い描くことではありません。入試で物語文を読む場合の想像力とは、あくまでもストーリーを通して主人公の気持ちを察する能力、または自分以外の人の気持ちを思い描く能力とも言えます。

趣味の読書とはちがい、入試で物語文を解いていくためには、たとえあまり興味が持てないような内容でも、登場人物の心情を読みとっていかなければなりません。なぜなら、それが試験で問われるからです。ですからまずは、登場人物の気持ちを意識すること、それが大切です。そしてその上で、想像力を働かせて心情を読みとっていくのです。

想像力を養うには?

先ほども書きましたが、入試で物語文を読むための想像力とは、ストーリーの内容を無視した、荒唐無稽な出来事を頭に思い描くことではありません。そうではなく、あくまでも登場人物の心情を理解するために必要な「ひとの気持ちを思い描く能力」です。では、その能力はどうすれば身につくのでしょうか?

ひと言でいうと「なぜ?」と自問する習慣を身につけることです。主人公の気持ちが描かれている場面で「なぜ、そんな気持ちになったんだろう?」と理由を考える癖をつけるのです。そうすれば物語文が苦手な子供でも、登場人物の心情を少しずつ意識するようになります。

そして読みながら「なぜ?」という問いかけを、できるだけたくさん考えてみるのです。ある場面の主人公の感情に対して、さまざまな角度から理由を考えてみるのです。理由を考えるという地道なプロセスが心情理解の力を養っていきます。さらに「なぜ?」と理由を考えることは、後の設問を解くヒントにもなります。時間はかかりますが、「なぜ」という問いかけを何度もくり返していくことで物語文の心情理解は深まっていきます。

語彙力の強化 → 心情表現の語彙を増やす

最後はやはり、語彙の強化です。語彙は本来、子供の成長と共に自然と増えていきますが、入試を考えると時間的な余裕がない場合も多いので、意図的に増やす努力も必要です。語彙の増やし方としては、読書や問題演習を通じて知らない言葉を覚えていくのが着実ですが、語彙力に特化した参考書に取り組む方が成果の出るのが早いと思います。

そういう意味でおすすめは『「気持ち」を読み解く読解レッスン帖』という問題集です。物語文の心情に絞り込んだ内容で、物語文の苦手な子供には参考になるはずです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする